「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」(6月8日文科省通知)についての静岡大学教職員組合執行部の見解と要請

2015-06-22

2015年6月22日

「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」(6月8日文科省通知)についての

       静岡大学教職員組合執行部の見解と要請

 

現在、全国の国立大学で平成28年度から33年度を期間とする「第3期中期目標・中期計画」の策定作業が佳境に入っています。本年6月末に提出された素案は、11月の文科省による素案修正等の通知を経て、来年1月には原案が提出されることになっています。このような折に、6月8日に文科省より各国立大学に通知された「組織及び業務全般の見直しについて」(以下「6・8通知」)が大きな社会的注目を浴びています。それは、産経新聞が「文科省素案再編促す 国立大の人文系縮小」(5月28日)と報じたように「人文社会科学や教員養成の学部・大学院の規模縮小や統廃合などを要請」する内容だったからです。「6・8通知」では、「ミッションの再定義を踏まえた組織の見直し」のなかで「特に教員養成系学部・大学院、人文社会系学部・大学院については、18歳人口減の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取組むよう努めることとする」と、学問領域を名指しで「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換」促進が明記されています。

これに対しては、朝日新聞社説「国立大学 すぐ役立つためだけか」(6月10日)、読売新聞社説「国立大学改革 人文系を安易に切り捨てるな」(6月17日)など多くの批判の声がマスコミから発せられるとともに、16日の全国学長会議でも「国の方針に懸念相次ぐ」(NHK)と報道されているところです。また京都大の山極寿一総長は17日、「京大にとって人文社会系は重要だ」と述べ、廃止や規模縮小には否定的な考えを示したとのことです。山極総長の「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない。国旗掲揚と国歌斉唱なども含め、大学の自治と学問の自由を守ることを前提に考える」との発言には深い共感を覚えるものです。

「6・8通知」については、「見直しの考え方」の冒頭で学問の自由や大学の自治の理念を踏まえて、「国立大学の教育研究の特性への配慮や自主的・自律的な運営の確保の必要性等の観点に十分に留意する必要がある」とされており、文系の重要性を一面的に否定したものでないとの指摘もありますが、「国立大学法人法第31条の4の規定」に基づいた指示であり、この指示への対応に連動した予算配分の方針が明確にされており、極めて重要な影響を今後国立大学法人の再編に与えるものと考えます。人文系含めた乱暴な組織廃止は、大学研究者に大きな影響を与えるのみならず、様々な学問領域の大学院等で日夜研究に励んでいる若い研究者志望者の受け皿をも縮小させ、日本の学術研究体制の将来に極めて深刻な打撃を与えるものです。

私たちは、今回の「6・8通知」に対して以下の大きな問題点を孕むものと考えています。第1に、国立大学法人化の目的でもある自律的な大学運営と目標と計画の作成への乱暴な介入ではないかという点です。今回の通知では国立大学法人法上の根拠(第31条の4)が示されています。同条では 「文部科学大臣は、第一項の認可をした中期計画が前条第二項各号に掲げる事項の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、その中期計画を変更すべきことを命ずることができる」とあります。しかし同条は、各大学が自主的に策定した中期計画の実施に重大な問題が生じた場合の規定であり、中期計画作成途上での同法を根拠にした通知は、国立大学の自治と自律を否定するものと考えます。

また第2に「教育系・人文系の再編縮小」がセンセーショナルに取り上げられていますが、「6・8通知」は、理系も含んだ大学の学術研究の在り方全体に深刻な影響を与えるものです。すなわち「基本的な方向」で「持続的な競争力を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学にさらに発展するため」とあるように、それぞれの国立大学のミッションの再定義に沿って、より実用性の高い、「高い付加価値」を生み出す教育研究領域への「選択と集中」(組織の見直し)を学長のリーダーシップで進めることを求めるものとなっているからです。「その他の組織についても、その必要性等について不断に検証・検討することのできる体制を確立」とあるように「聖域」はないのであり、理系であっても基礎的研究分野の軽視が進み、実用的分野でも短期的成果に基づく予算配分が進むことになります。文系・理系の枠を超えて短期的成果主義に日本の学術体制を歪めるものになっていると言えます。また「運営費交付金を重点的に配分する仕組み」では、すでに①人材育成や地域課題での地域貢献を中心とする大学、②世界と全国的な教育研究を行う大学、③世界で卓越した教育研究を行う大学というグループ分けのなかですでに差別化された予算配分が予定されており、国立大学間の差別と格差を一層助長するものとなっています。

国立大学法人化法以降の、国の科学技術政策や大学政策の流れを踏まえたとき、今回の「6・8通知」は、全国国立大学の均等な教育研究体制とは本格的に決別し、ミッションの再定義として3類型に誘導してきた文科省が、本格的な組織の統廃合の推進に踏み込んだものと言えます。それは、日本学術会議「日本の展望―学術からの提言2010」における「学術の総合的発展のなかに科学技術を位置付ける」という方向性とはま逆の方向であり、「人文・社会科学の位置付けを強化」という提言を踏みにじるものと言えます。私たちは、静岡大学のみならず日本の学術研究体制の衰退につながる方向性ではないかと深く憂慮するものであり、静岡大学においても総合大学としての魅力をますます発揮させるために、多様な学問領域の発展を基礎とした日本の学術研究体制の発展に向けて学長の真のリーダーシップ発揮を希望するものです。また第3期中期目標・中期計画の作成については、「6・8通知」に左右されることのない自主性の堅持を要望するものです。

カテゴリー: お知らせ 

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