教員の身分保障、以前と変わらない? 書記長のつぶやき③

2015-07-14

4月から就業規則「教員の就業に関する規程」で教員の「降格・解雇」のルールが変えられた。「大学教員は、評議会の審査の結果によるのでなければ、その意に反して降格又は解雇されることはない」が、「学長は、大学教員を降格又は解雇する場合は、評議会の議を経るものとする」に変更されたのである。教職員組合には3月20日の団体交渉で突然知らされた。その後、新年度の教職員組合執行部は、教員の身分保障が著しく悪化する不利益変更ではないかと抗議を行っている。

この間の団体交渉等で、大学側は「本学において同規程が過去に適用されたことはないし、評議会の議を経るので以前と何ら実質的変化はない」との説明を繰り返している。教職員組合の懸念は杞憂であろうか?

戦後の大学自治は、財政的保証と身分保障によって制度的に支えられて来た。しかし、学生数や教員数等を基準に積算された予算が安定的に配分されていたシステムが、国立大学法人化によって運営費交付金という文科省のさじ加減次第のシステムに変更されたことで財政的保証は著しく弱まった。今や、財政的措置を背景に人文社会科学や教育系などの学問領域の組織廃止や組織再編を迫り、国歌斉唱を要請するまでになっている。身分保障については「教育公務員特例法」で教員の処分については評議会の審議を要するという規程で支えられて来たものが、非公務員型の法人化によって「教育公務員特例法」の対象外に国立大学法人はされてしまった。その意味で、今回の大学の就業規則変更は合法である。では、この就業規則変更によって大学教員の身分保障は、「以前と何ら変わらない」のであろうか?

先日の団体交渉で、教職員組合は「教員の就業に関する規程」に基づく「降格・解雇」に関する「審査手続きについて」では、学長が指名した理事、副学長、評議会評議員各一名からなる小委員会が審査報告書案を作成し、それを学長が評議会の議にかける形式になっており、学長の恣意的な決定を制限し、解雇権の乱用を防止する仕組み等がないと指摘した。これに対して大学側からは教員の「降格・解雇」については、「教職員懲戒手続き細則」で厳格な手続きが定められているから大丈夫だとの説明が繰り返された。

「教職員懲戒規程」では、教職員の懲戒は役員会のもとに懲戒委員会をおくとする一方で、教員の懲戒については、「教員の就業に関する規程」の定めるところとされている。この「教員の就業に関する規程」では、教員の「降格・解雇」に関する手続きは別に定めるとされている。この手続きが「教員の審査手続きについて」であり、前述のように「手続き」では学長指名の小委員会が審査報告書を作成するとなっている。一方で「教員の就業に関する規程」は懲戒処分についての定めがあり、やはり評議会の議を経て学長が決定する、手続きは別に定めるとある。もちろん懲戒処分のなかには懲戒解雇が含まれている。

そこで「教職員懲戒手続き細則」を見ると「教員を懲戒する場合には、懲戒委員会の審議の後、教員の就業に関する規程に基づき評議会の議を経るもの」となっている。規則上のたらい回しであるが、教員の解雇については「教員の就業に関する規程」では、第7条の「降格・解雇」と第8条の「懲戒」の2ルートがあることになる。そうすると、懲戒規程等における懲戒委員会と審査手続きにおける小委員会の関係がよくわからない。懲戒規程を字義通りに読めば、「就業に関する規程」に委ねられており、「手続きについて」における小委員会に「審議」が委ねられることになる。一方で「懲戒手続き細則」では教員の解雇も懲戒委員会で審議することになっており整合性が取れていない。

が、ともかく、小委員会であれ、懲戒委員会であれ、そのメンバーは学長指名の理事、副学長、評議会委員各一名であり、学長等の恣意的な処分がまかり通る仕組みになっている。評議会での議を経ることになっていても審議段階での証拠の取捨選択で操作されれば不公正な報告書に基づく議になり、そもそも正確な判断ができない危険性が存在する。教特法上では評議会が主体となって審議委員を選定して審査を行うので学長から相対的に自立した審議ができる仕組みであったが、この審議の機能が学長他一部のメンバーに移り、評議会は議を行う(報告書に基づいて意見をいう)だけとなり、その議はともあれ学長が自由に決定できる仕組みとなっているわけである。

文科省が「日本再興戦略」(安倍内閣版成長戦略)用に提出した「国立大学経営力戦略」では、「組織の廃止や社会的要請の高い分野への積極的転換を含めた組織改革を進める」ことが明記され、その具体化として6月8日の文科省通知では人文社会科学や教育系が名指しされたわけであった。この組織改革の進捗次第による運営費交付金の大幅カットが示唆されている。当然、この組織改革をスムーズに行うためには大学教員の「配置転換、出向、転籍」や「降格・解雇」を柔軟に行うことが必要となってくる。「過去にはなかった」から大丈夫ということには全くならない。また恣意的な懲戒処分がまかり通るようになると学問の自由を守る身分保障が破壊されることになる。教職員組合の懸念は決して杞憂ではない。

本年度の教職員組合は、先日の団体交渉で教員の身分保障にかかわる労働協約案を提出した。教職員組合の懸念が杞憂というならば、この労働協約案を締結しても全く問題はないでしょうと一言添えておいた。将来を見据えて、学問の自由を守るための教員の身分保障を教職員組合は守るために闘う意思があることを明確にすることが重要だと思う。

カテゴリー: コラム 

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