活動方針・活動予定

2024年度教職員組合の活動方針

(1)人事院勧告の完全実施を要求する。

 予想される2024(令和6)年度人事院勧告における、「物価上昇分に応じた形での、月例給・ボーナスの引き上げ」が、静岡大学においても適切かつ迅速に行われるよう要求したい。静岡大学では2021(令和3)年度から人事院勧告の内容を踏まえた学内規則の適用については、改正給与法公布後の規則改正から遡及適用は行わないことを原則としている。物価上昇分に応じた形での給与の引き上げが十分に行われていないため、人勧が完全実施されているとはいえない状況にある。したがって、遡及適用とともに、人事院勧告の完全実施を求めていく。

(2)ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進と支援体制の充実を要求する。

昨年度「静岡大学ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン宣言(DE&I 宣言)」が制定されている。その宣言に見合うように、すべての教職員・学生がそれぞれの個性と能力を十分に発揮でき、不当な差別や排除の無い職場環境・教育環境の整備が行われることを求める。また、そのための新しい方法や技術の導入、合理的配慮への理解とそのための人や設備の充実を求める。

例えば、教員が妊娠中であったり、一時的な病気や怪我で対面での授業が困難な場合も、大学が定める「オンライン授業」枠にとらわれることなく、オンライン授業を活用すれば、当人の授業を行うことができる。このような理由の場合に「制限」を超えてオンライン授業を行うことができるようにすることは合理的配慮にあたるといえる。昨年度、大学執行部からは「真にやむを得ない事情によって」実施できるとの回答を得たが、上記のような理由で通常の合理的配慮として実施できるよう求めていきたい。

 また、託児施設や学生支援室などダイバーシティを進めるうえで欠かせない支援体制の整備も進められているが、利用者の増加や多様化の中で担当する教職員の業務が多忙化しており、支援機器や設備の充実も十分ではないと考えられる。さらに産休・育休明け教職員に対しては、一定期間、夜間の授業や業務の免除などの配慮も求められる。まずは、教職員間での理解の強化ともに、支援体制をめぐる環境改善と人的・予算的充実がなされ、静岡大学全体のDE&Iが改善・推進されるよう要求していく。

(3)主担当・副担当制等に依存した学内業務の適切な運用と支援の充実を要求する。

 大学改革の流れの中で、地域貢献・地域連携などの大学の目標の主たる業務を担う機構、センターなどが設置され、教育機関としても学環から新学部の設置に至っているが、それらの研究・教育・事務の業務の多くの部分は配置された主担当教員のほか各領域から副担当として選任された教員が担っている。そうした副担当教員の多くは、大学が掲げる目標に対しての善意ややる気、責任感にもとづいてエフォートを切り出して業務を担当しており、中には、副担当教員のみから運営されている施設もある。こうした副担当教員の業務環境では、もともと過重な業務や適切な人員配置がない中での業務などで、副担当教員に負荷がかかり、教員の「やる気搾取」ともいえるような状況が生じている場合がある。このような点から主担当・副担当業務の適切な運用と必要な人員配置などの適切な支援を求めて行く。

(4)有期雇用の無期雇用への転換を要求する。

 不安定な立場に置かれている「有期雇用(任期付き雇用)の教員」の雇用問題を明確に把握し、ご当人の希望を踏まえ、雇用継続(無期雇用への転換)を求めていく。最長5年の有期雇用(任期付き教員)の採用は増加傾向にあるが、処遇も十分に保障されていないのが現状である。事務職に近い研究職もあり、労働条件の改善を求めるとともに、本人の希望に応じて無期雇用への転換を促す取り組みを積極的に行う必要がある。

 パート職員については、更新2回、最長5年とされているが、専門的な資格・知識等が必要な業務の内容を考慮して、5年を超える雇用期間が可能であるとされている。また本学に引き続き1年以上在職しているもので極めて優秀な職員は、事務職員採用試験により常勤職員への転換が可能とされており、継続的な雇用が必要となる専門性を有した職にあたる特任職員などは、常勤職員への転換を進めるとともに継続雇用を求めていく⇒(13)へ。

(5)55歳昇給停止と減額支給の見直しを要求する。

 静岡大学の教職員は、年齢が55歳に達すると、①事実上の昇給停止(教職員給与規程第11条第4項)と、②基本給等1.5%の減額支給(平成22年11月26日規程附則)を強いられる。

 もっぱら年齢のみを理由として、適切かつ公平な業績評価と昇給を行わず、減額支給という不利益のみを押しつけることに何の合理的理由も認められない。国立大学職員のラスパイレス指数は84%であり、国家公務員と比べると給与水準がかなり低い。さらに、技術職員の多くは53歳で一般職4級(係長級)に昇格し55歳で昇給停止となり退職を迎えている。給与が低い者まで55歳で昇給停止にすることは退職金も低く抑えることになり大きな不利益を被っている。一方、教員については、そもそも大学教員の着任の年齢は一般の国家公務員よりも高くなる傾向(就労が遅くなる傾向)があり、昇給停止を一般の国家公務員に合わせる合理性は乏しい。

 特に、大学・学部の赤字経営の影響を受ける形で、教員の昇任人事の遅れが顕著となっており、ポイント制による学部間の格差も顕著になっていることを踏まえ、対象者の給与面での不公平の改善に向けた取り組みを、大学側に求めていく。

(6)時間外労働(長時間労働)の是正を要求する。

時間外労働(長時間労働)は、労働安全衛生上の問題であり、給与・手当の問題でもある。いわゆるサービス残業など、大学として把握している以上に、事態は深刻であると考えられる。特に昨年度に引き続き、アフターコロナへの対応や大学再編等大学改革の事務的処理に関して、時間外労働等の問題の発生も懸念される。また、部局係長クラスへの業務集中のような、業務分担の不均衡もみられる。こうした実態を大学に訴え、改善を求めるためにも、組合としてもその実態を把握する努力をすすめるとともに、静岡大学に対しては、職員の労働時間を適切に把握・管理することに加えて、サービス残業や長時間労働を是正するための具体的方策をとるよう、各職場管理職に対して指導を徹底することを、昨年度に引き続き求めていく。また、やむを得ず行われている時間外労働に対しては「正確な残業時間の記録付け」が行われ、適切かつスムーズに時間外労働手当が支給されていくことを求める。また、問題の抜本的改革としての業務削減についてもその具体案を含めて要求していきたい。

(7)アフターコロナへの適切な対応を要求する。

 5類移行に伴ういわゆるアフターコロナへの対応として、必要な対策等が継続して行われる一方、制限されていた諸活動が適切かつ速やかに回復されるよう要求していく。コロナ対応として制度化された在宅勤務や在宅授業の制度のメリットが、アフターコロナの状況においても合理的に機能し運用されていくことを要求する。また、学生の実態を踏まえつつ、必要に応じた支援が継続されることを求める。

(8)浜松市等の地域調整手当を静岡市並みに引き上げることを要求する。

 現在、地域調整手当の支給割合は、「地域調整手当支給細則」により、静岡市5%、浜松市・島田市・藤枝市4%(3%に特別加算率1%を加えた割合)と定められている。同じ業務を行いながら地域調整手当により給与に格差が出ることへの不満は解消すべきであり、公平性を期すために、一律静岡市並みの割合での支給の実現を求める。

(9)大学入学共通テスト試験業務の負担軽減と手当の引き上げを要求する。

 静岡大学が負っている大学入試共通テスト試験業務の負担は、全国でもっとも高いレベルのものである。教職員の数に比して受け持つ受験生の数はきわめて多い。そのためほとんどの教職員が毎年出動せざるを得ないという状態である。加えて、大学入学共通テスト試験の業務に対する手当が不十分であるという不満が教職員の間に根強い。

 いわゆる「カンニング防止対策」の業務量が増えてくことが予定されている状況のなか、改めて入試手当の引き上げと試験業務の負担軽減、特に静岡大学の負担軽減策として、静岡県内の「他大学等での試験の実施」を関係機関に強く求めていくよう働きかけを行っていくことを求める。

(10)退職後補充の新規採用人事の滞りの解消を要求する。

 退職の教員があったときの後補充の新規採用人事の滞りは、(赤字部局において)教育・研究におけるマンパワーの低下を招いており、労働環境の悪化をもたらすとともに、静岡大学の教育・研究の維持・発展にも悪影響を与えていることは明らかであろう。いわゆる「退職者数の1/2の数だけの新規採用者数のルール」によってその悪影響は増大していたが、その廃止後の適切なルールの運用と将来を見据えたなかでの積極的な新規採用人事(採用者数)の実施について改善を求めていく。

(11)労働環境の速やかな是正を要求する。

 教職員に対しては物理的な労働環境の速やかな整備を求めていく。けがや事故の防止(労働災害発生の未然防止)、衛生環境の向上を目指し古い施設や危険個所・不衛生な箇所の改善・改修が求められている。引き続き、施設の老朽化等によりけがの発生が懸念される危険な場所や不衛生な場所が散見される状況において、労働災害発生の未然防止の観点により、その場所の改善・改修を求める。特に不合理に重厚で一部欠損したままになっている正門門扉などについての改善を求める。

(12)労務職員の速やかな環境整備を要求する。

 労務職員の安全な作業をサポートするための環境整備(必要な備品や作業着等の更新)を要求していく。大学の施設・環境の美化・清掃等にご尽力いただいている労務職員の方々の作業に必要となる作業資材、作業機材・道具の適切な更新を求める。夏季における熱中症対策については、浜松で観測された41.1℃の最高気温があったことなどを考慮すれば、徹底的な対策が求められることは当然である。労災事例や有害生物に関する情報提供と予防、労務職員に関する体調管理や労務管理なども適切に対応するよう求めていく。一部の機能的な作業着への更新が行われたが、さらなる安全性の向上を目指し、要求を行っていく。

(13)非常勤職員の雇用期間(5年で雇い止め)の延長を要求する。

 就業規則によれば、非常勤教職員は雇用期間5年を超えるとき、6年目の契約期間満了日の翌日から無期労働契約に転換することを学長に申し込むことができる(非常勤雇用教職員就業規則第5条の2)。しかし、学長裁定「非常勤職員(パート職員)の労働条件等に関する基準」(平成23年1月28日)により、契約更新は2回以内、通算期間の上限は5年(1年-2年〔1回目更新〕-2年〔2回目更新〕のケース)とされ、それらの条件を満たすと雇い止めになる。つまり、最長5年の期間満了で退職を強いられるため、無期労働契約への転換条件(「5年を超える」)を満たすことができない。

 たしかに、「非常勤職員(パート職員)の労働条件等に関する基準」は上記雇用期間の例外を設け、①障害者雇用促進法の対象者、または②所定の要件(専門的資格等、部局長が特に必要と認めた業務、部局予算の確保、本人の希望、勤務成績優秀、部局長等の推薦)を満たし学長が認めた者については、5年を超えて雇用することができるとしている。しかし、②の要件はおもに調理師免許や社労士などの国家資格から簿記検定、秘書検定などを想定するもので、極めて幅が狭い。そのため、ほとんどの非常勤職員にとって5年を超える雇用は事実上困難なものになっている。

 大学業務の水準と一貫性を維持するうえで、非常勤職員の雇い止めは極力回避すべきである。そこで、可能な限り、5年を超えて雇用を継続し、無期雇用への転換を図るべきである。非常勤職員の雇用を安定させることは、静岡大学の経営にとって大きなメリットとなる。それはまた労働契約法改正(2012年法律第56号)の立法趣旨でもある。なお、浜松医科大学では、契約更新の回数・期間は既に上限を設けられておらず、全職種で5年雇止めを撤廃した。

 以上のことを踏まえ、現行の雇い止めについては、その見直し(雇用期間の延長および上限の撤廃)を強く求めるものであり、昨年度までの労使間での複数回の議論・検討をもとにした新たな制度づくりを大学側に期待するものである。

(14)非常勤職員の「物価上昇分に応じた形での時間給引き上げ」を含めた時間給見直しを要求する。

 静岡大学における非常勤職員の時間給の低さに関する課題の解決に向けた取り組みとしては、これまでの団体交渉・事務折衝において何度も繰り返し行ってきた。そのやり取りなかで、静岡大学での最適な時間給額を定めるための方法論のひとつとして、「近隣の他の事業所等の賃金を調査し、それとの比較を通して、静岡大学の非常勤職員の方々の最適な時間給額について検討していくことの必要性」が労使間で確認されている。2年前、非常勤職員の時間給は、「先も見込んで」1,000円に引き上げられたが、新たに「物価上昇分に応じた形での賃金引き上げ」が検討・実施されている折でもあり、現状に見合う時間給設定になっているか引き続き注視して交渉を重ねていく。また、引き上げに伴い、以前から雇用されている非常勤職員の経験に応じた時間給の設定については不公平感が生じている。この点についても改善を求めて行きたい。

(15)年俸制職員の手当てについて、制度の再検討と十分な説明を要求する。

 年俸制と月給制では、下記の通り、教員の手当てに大きな差異がある。制度の確認と再検討、及び教員への十分な説明を求めたい。年俸制で採用された教職員(Ⅰ型・Ⅱ型とも)の手当は、国立大学法人静岡大学年俸制適用教員給与規程第5条に、以下のように定められている。

 諸手当は、国立大学法人静岡大学教職員給与規程(以下「教職員給与規程」という。)第4条に定める手当のうち、次の手当とする。

(1) 扶養手当

(2) 管理職等手当

(3) 住居手当

(4) 通勤手当

(5) 特殊勤務手当

(6) 時間外労働手当

(7) 深夜労働手当

(8) 特別貢献手当

 年俸制Ⅰ型適用教員には、期末手当、勤勉手当、退職手当その他前項に定める手当以外の手当については支給しない。

 それに対して教職員給与規定第4条では、手当は以下の各号によるとされている。

(1) 扶養手当

(2) 管理職等手当

(3) 地域調整手当

(4) 広域異動手当

(5) 住居手当

(6) 通勤手当

(7) 単身赴任手当

(8) 特殊勤務手当

(9) 時間外労働手当

(10) 深夜労働手当

(11) 大学院調整手当

(12) 特別支援学校教員調整手当

(13) 特別資格調整手当

(14) 義務教育等教員特別勤務手当

(15) 教職調整手当

(16) 特別貢献手当

 月給制と年俸制では給与や退職金等の仕組みが異なるのは大方の職員にも理解されていると考えられるが、手当に差異があることについては理解されているとはいえず、その中でも単身赴任手当や大学院調整手当などは、5年ごとの見直しになっているため、支給されない時期が生じている。したがって、実情に合わせた支給を実施すべきである。また、新任教職員採用時や年俸制への切り替えの際には丁寧な説明を実施し、当事者の理解を得ることを要求する

(16)人件費ポイントのゼロベースでの見直しと柔軟な運用を要求する。

 現在、人件費ポイント基準が設けられ、それによって人事管理が行われているが、教員の新規採用や昇任が凍結され、学部の業務に支障を来すほどの事態も見られる。とくに、過去に積み上げられた人件費の負荷を、現職の教員が背負わされ、昇任もなく人材も不足する中で職位以上の業務を過剰に要求されている実態がある。

 人件費ポイントはあくまでも基準の一つとして位置づけ、教職員の業務を損ねずモチベーションを維持・向上できる運用を強く要求するものである。具体的には、ポイントがマイナスであっても、人事の凍結がある一定期間続けば一時的に縛りを解除すること、ポイントに幅を持たせて部局の円滑な維持のために喫緊の人事の方を優先した運用を心がけること、教職員の新規採用の凍結に伴う非常勤講師採用枠は通常の非常勤講師採用枠と別に設けること、などの制度の見直し、ひいてはゼロベースでの見直しを求めていく。

(17)学長選挙の「意向投票」の実施と結果を踏まえた公正な選考を要求する。

 学長選考に際して、「意向投票」が実現されるように、関係組織・関係者との調整を図っていき、同時に「意向投票の結果」が尊重されることを求めていく。それに先立ち、各立候補者が将来の大学運営等に関する所見・ビジョン等について大学教職員に直接説明・公開(質疑応答含む)できる場と、すべての教職員が静岡大学の今後の進むべき姿をイメージしやすくなるような機会を設けるよう働きかけるとともに、組合でも積極的に活動を行う。

(18)能登半島地震等被災学生や生活困窮学生への支援を要求する。

 能登半島地震等の被災学生の実態を踏まえつつ、必要に応じた支援の拡充が実施されることを求める。2024年1月1日に発生した能登半島地震など、近年、災害が多発する傾向にある。被災学生に対する支援の拡充や配慮を求めていく。また、生活困窮学生が増加していることから、支援の拡充を求めていく。

そのほかの取り組み

◇厚生関係

(1)無農薬新茶販売の斡旋を行なう。

(2)組合員の交流会を企画する。

(3)教職員共済生協(「教職員共済」)、全労済加入と労金利用への取り組み

 教職員共済生協の「総合共済」は普通の火災・災害、休業、介護、退職等の保障に加えて「教職員賠償」、つまり教職員の職務中に生じた様々な損害を賠償する保険を提供している。近年、教育遂行業務(入試業務、海外への学生引率、相談業務等々)において、大学執行部は末端の教職員に責任の全てを負わせようとする姿勢を取っている。このような執行部の姿勢に対して自己防衛策としてこの保険は有効である。保険には損害賠償金、訴訟対応費用(弁護士費用)、被害者対応費用等もカバーしたものになっている。組合では共済への加入が組合員の利益となると判断し、昨年度に引き続き、加入取り組みを強化する。

 また全労済についても、地域に密着し、対応の早い自動車共済、火災共済を中心に加入の取り組みをすすめる。労金についても、組合員の福利厚生の大きな柱として、組合員の利益になるような情報を提供し、利用の取り組みをすすめる。加入者・利用者が増えることにより、利用配当金や事務手数料も増えることになり、結果的には組合員に還元されることになる。

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